2.コクラン共同計画エビデンスエイド:地震に関する情報リソース

コクラン エビデンス・エイド: 地震に関する情報リソース
(COCHRANE EVIDENCE AID: RESOURCES FOR EARTHQUAKES)

ここでは、いくつかの関連コクランレビューと大地震発生後に重要なヘルスケアに関する結論を紹介する。これらは意思決定者に役立つと思われる系統的レビューへの道標となるであろう。 ラテンアメリカとカリブ海諸国は、Virtual Health LibraryのBIREMEインタフェース(英語、スペイン語またはポルトガル語)を通してコクラン・ライブラリーに無料でアクセスできる。この情報のPDFは英語・スペイン語・仏語でダウンロードできる。
被災地に対する医薬品の寄付に関するWHOのガイドラインは、ここから入手できる(リンク切れ 110314確認)。また機関救急医療キット(Interagency Emergency Medical Kit)の詳細は、英語・スペイン語・仏語でこのサイトから利用できる。

下痢の予防と治療(DIARRHOEA PREVENTION AND TREATMENT)
コクラン・エビデンス・エイドを参照のこと。洪水と不衛生な水、便による汚染(faecal pollution)に起因する水関連疾患、下痢の予防、管理・治療に関する情報リソースを提供している。

他の感染症(OTHER INFECTIOUS DISEASES)

合併症の無い腸チフスとパラチフス(腸チフス)治療ためのアジスロマイシン
(Azithromycin for treating uncomplicated typhoid and paratyphoid fever (enteric fever)
アジスロマイシンは耐性菌を持つ集団を含むこれらの疾患の患者の治療に、フルオロキノロン薬(fluoroquinolone)より有効である。アジスロマイシンはセフトリアキソンより有効である可能性がある。 [ ダウンロードPDF ]

創傷管理(Wound management)

創傷管理のための水(Water for wound management)
成人の急性創傷を水道水(tap water)で洗浄すること、感染が悪化するという強いエビデンスはなく、一方で洗浄によって治癒が促進したり、感染が減少するという有力なエビデンスもない。飲用水道水の欠乏時には、沸騰したり冷やした水は蒸留水と同様に傷の洗浄に使用できる。 [ ダウンロードPDF ]

[最新エビデンスの要約]

骨折管理 (Fracture management)

子供の手首の骨折治療の介入
(Interventions for treating wrist fractures in children)

若木骨折(隆起骨折 buckle fractures)のため取り外し可能な副子(splintage)での固定、骨折による転位の修復後(after reduction of displaced fractures)に伝統的な上腕ギブスを用いることは限定的であるがエビデンスがある。経皮的ワイヤでの固定は変形の再発(redisplacement)を予防するが、機能改善を含む長期的な予後は分かっていない。 [ ダウンロードPDF ]

成人の橈骨遠位端骨折を治療における骨移植と骨代用物
(Bone grafts and bone substitutes for treating distal radial fractures in adults )

骨足場(bone scaffolding)の構築は、機能的改善と安全性のエビデンスが不十分なギプス(plaster cast)と比べ、形態的な予後を改善する可能性がある。機能的な予後や安全性、他の治療との比較に関してはエビデンスが不十分である。 [ ダウンロードPDF ]

成人の大腿骨近位部骨折の術前牽引
(Pre-operative traction for fractures of the proximal femur in adults)

入手可能なエビデンスでは、ルーチンに行う皮膚牽引や骨牽引(traction)いずれの術前牽引も有効性が無い。しかしあるタイプの骨折に対して術前牽引が有効である可能性を否定するものではない。同時に牽引による他の合併症のリスクも否定できない。 [ ダウンロードPDF ]

成人の橈骨遠位端骨折に対する経皮的ピンニング
(Percutaneous pinning for treating distal radial fractures in adults)

成人の橈骨遠位端骨折の経皮ピンニング使用に関するいくつかのエビデンスはあるが、正確な役割と方法は確立していない。Kapandji法や生分解性(biodegradable)のキャスト材を使用した場合の合併症の頻度は高く、これらの一般的な使用は勧められない。 [ ダウンロードPDF ]

成人の上腕骨近位端骨折の治療介入
(Interventions for treating proximal humeral fractures in adults)

転位していないあるタイプの骨折に、固定をしない早期の理学療法が有効である可能性がある。どのタイプの骨折においても、手術が長期的に良い効果を示すかどうかは明らかではない。 [ ダウンロードPDF ]

成人における尺骨の分離骨幹部骨折に対する介入
(Interventions for isolated diaphyseal fractures of the ulna in adults)

転位の少ない尺骨単独骨折(minimally displaced isolated fracture of the ulna)において、肘のキャスト固定(cast immobilisation of the elbow)は、前腕だけを固定するキャストや装具と比べて、短期的な利点(疼痛軽減や骨折治癒)が示されておらず、長期的にも職場復帰が遅れる可能性が指摘されている。[ダウンロードPDF]

成人の橈骨遠位端骨折に対する創外固定 対 保存療法
(External fixation versus conservative treatment for distal radial fractures in adults)

成人における橈骨遠位端の背側転位骨折(dorsally displaced fractures of the distal radius)に対する創外固定(external fixation)の有効性を示すいくつかのエビデンスがある。機能的予後を改善するエビデンスは不十分だが、創外固定は再転位を減じ、形態的な予後を改善し、手術操作に伴う合併症は少ないとされている。[ダウンロードPDF]

成人における股関節骨折に対する保存 対 手術治療
(Conservative versus operative treatment for hip fractures in adults )

近代的な外科手術設備が使えない場所では保存療法が許容され、手術をした場合の合併症の発生も防止できる。しかし、手術ができずに保存療法を行った場合は、リハビリテーションにさらに時間を要し、肢に変形が残りやすい。[ダウンロードPDF]

成人の橈骨遠位端骨折の保存療法
(Conservative interventions for treating distal radial fractures in adults)

ランダム化比較試験のエビデンスが不十分なため、一般的な成人の橈骨遠位端骨折における最適な保存療法は確立されていない。したがって現時点で保存療法を行う臨床家(practitioners)は、自分が精通し、提供設備の観点から費用対効果が良い技術を用いる必要がある。患者の選好や状況、合併症のリスクも考慮すべきである。 [ ダウンロードPDF ]

大腿骨近位部やほかの長管骨の閉鎖性骨折における手術の抗生剤予防投与
(Antibiotic prophylaxis for surgery for proximal femoral and other closed long bone fractures)

閉鎖性骨折手術の際に抗生剤予防投与は有効である。予防投与の単回静注は、使用する薬剤作用が、組織レベルで12時間以上の最少抑制濃度(minimum inhibitory concentration)を超える場合に有効である。選択した抗生剤の半減期が短く、切開から創傷閉鎖までの時間を通して最少抑制濃度を超えない場合は、12時間投与量スケジュールを用いた複数回投与が勧められる。 [ ダウンロードPDF ]

身体的外傷(骨折を除く)(PHYSICAL TRAUMA (EXCLUDING FRACTURES))

重症患者における膠質浸透圧輸液 対 晶質浸透圧輸液
(Colloids versus crystalloids for fluid resuscitation in critically ill patients)

外傷、熱傷、あるいは術後の患者において、膠質浸透圧輸液が晶質浸透圧輸液と比較して死亡のリスクを減少させる、というランダム化比較試験によるエビデンスはない。膠質浸透圧輸液は生存の改善につながらず、また晶質浸透圧輸液よりも更に高価であるため、こういった患者において継続的に使用することがランダム化比較試験の状況下以外で正当化されうるかどうかは難しい。[ダウンロードPDF]

急性脊髄損傷に対するステロイド剤
(Steroids for acute spinal cord injury)

高容量メチルプレドニゾロンによる治療は、受傷後8時間以内に開始されるという第V相ランダム化試験においてのみ効果が示された薬物治療である。ある試験では、治療が受傷後3〜8時間で開始された場合、その後24時間から48時間まで維持容量を投与することでさらなる効果があると報告している。[ダウンロードPDF]

急性脊髄損傷に対するガングリオシド
(Gangliosides for acute spinal cord injury)

現在あるエビデンスからは、脊髄損傷患者においてガングリオシドによる治療が死亡率を減少させるとは言えない。ガングリオシド治療が生存者の回復や生活の質(QOL)を改善させるというエビデンスも未だない。[ダウンロードPDF]

急性外傷性頭部外傷に対するマンニトール
(Mannitol for acute traumatic brain injury)

脳内圧上昇に対するマンニトール治療は、ペントバルビタール治療に比べ死亡に対し有効である可能性があるが、高張生理食塩水と比較して死亡に対し若干有害な可能性もある。脳内圧を指標とした治療は、神経学的兆候や生理学的指標と比較して多少有用である。[ダウンロードPDF]

外傷性頭部外傷に対する低体温療法
(Hypothermia for traumatic head injury)

頭部外傷治療において低体温療法が有効であるというエビデンスはない。低体温療法は、適切に割り付けがブラインドされた質の高いランダム化比較試験という状況以外で行われるべきでない。[ダウンロードPDF]

急性外傷性脳損傷に対する副腎皮質ステロイド
(Corticosteroids for acute traumatic brain injury)

次のPDFで紹介する臨床試験においては、ステロイド使用に伴う死亡率の上昇を認めたことから、外傷性頭部外傷患者に対してステロイドをルーチンに投与すべきでない事が示唆されている。[ダウンロードPDF]

外傷性脳損傷患者の不安に対する心理療法 
(Psychological treatment for anxiety in people with traumatic brain injury)

次のPDFのレビューでは、軽度の外傷性脳損傷後の急性ストレス障害に対する認知行動療法の有効性、および軽度から中等度の外傷性脳損傷の患者の一般的な不安症状を対象とした認知行動療法と神経リハビリテーションの併用療法の有効性について、いくらかエビデンスがあるとされている。[ダウンロードPDF]

腎(Renal)

高カリウム血症に対する緊急処置 
(Emergency interventions for hyperkalaemia)

サルブタモールの吸入または静注によるインシュリン−グルコース療法は高カリウム血症の緊急時に最初に行う治療としてエビデンスがある。単独の治療よりもそれらの組み合わせの方がより有効であり、高カリウム血症が重篤である場合は考慮すべきである。不整脈の認められる時は、カルシウムの静注が不整脈治療において有効であるという多くの経験的な動物実験データがある。[ダウンロードPDF]


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